粉ミルク宣伝規制 -母乳代用品の販売流通に関する国際規準「WHOコード」って何?
- 2020.11.23
- ヘルス/ Health
- 国際協力, 海外

粉ミルクには実は広告制限がある?
粉ミルクをテレビコマーシャルなどで目にしたことがないことにお気づきでしょうか?
そう、実はオムツやおもちゃなどの宣伝はあるものの粉ミルクの宣伝はありません。
実は粉ミルクの国際基準法で禁止されているのです。
WHOコードとは「乳業メーカーによる人工乳の自由な販売競争の規制」であり
国際基準WHOコードの主な内容このようになっています:
- 母乳代用品はすべて一般に宣伝してはならない。
- 母親に無料のサンプルを与えてはいけない。
- 無料あるいは優待価格での粉ミルク提供を含め、保健・医療機関に販売促進活動をしてはいけない。
- 企業が派遣する人が母親に接触してはいけない。
- 保健・医療従事者に贈り物をしたり、個人的にサンプルを渡したりしてはいけない。保健・医療従事者は母親に製品を渡してはならない。
- 赤ちゃんの画像を含め、人工栄養を理想化するような言葉あるいは画像を使用してはならない。
- 保健・医療従事者への情報は、科学的で事実に基づくものでなければならない。
- 乳児の人工栄養に関するすべての情報は、母乳育児の恩恵と優位性と、人工栄養にともなう経済コストと危険性を説明していなければならない。
- 加糖練乳のような不適切な製品は、乳児用に売り込むべきではない。
- たとえ国がコード実施に向けて動いていなくても、製造者と流通業者はコードの条項に従うべきである。
※以下REBORNから出典
1960年代-1980年代で起きた問題
先進国では1950年頃から流行りだした粉ミルクですが、1960-1970年頃にには粉ミルクの販路が新興国・発展途上国へと拡大しました。
水インフラが整っている先進国の女性にとっては近代的なライフスタイルを支えるアイテムとして欠かせない粉ミルクであったかもしれませんが、新興国・途上国では下記のような問題が浮上しました。
・衛生的ではない水で粉ミルクを溶くことで病原菌を摂取
・衛生的にではない哺乳瓶を使うことで病原菌へ感染
・貧困層の家庭で粉ミルクを薄く作り栄養失調へ
これらを見据え、WHO(世界保健機関)とUNICEF(国連児童基金)は、WHOコードを策定し、1981年の世界保健総会で118対1、棄権3(反対はアメリカ、棄権は日本、韓国、アルゼンチン)で承認されました。ちなみに日本は1994年の世界保健総会で賛成しています。
母乳のメリット、そして難しい点
母乳には様々なメリットがあります。例えば:
・赤ちゃんに必要な栄養を与えてくれる
・下痢と肺炎に抵抗できる抗体を与えてくれる
・感染症と闘う助けになったり、疾患を予防したり、正常で健康的な発達に貢献
・生存率の向上 (UNICEFの統計によると生まれてすぐの赤ん坊が母乳で育てられた場合、そうではなかった赤ん坊と生存率が6倍違うとのこと)
しかし、同時に難しさとして
・常に家にいられない場合搾乳器が必要
・搾乳された母乳を保管できる冷蔵庫が必要
・公共の場で授乳する難しさ
などもあげられます。
どのような社会インフラが必要か
搾乳や保存にお金をかけずに授乳を促進するためには、シンプルに授乳のしやすい環境づくりが必要です。どこでも授乳できることが一番お金がかからないのです。
公共の場での授乳、授乳ケープの活用、授乳室の設置など様々な方法があります、
そして同時に、一般的に「授乳が大切であること」が認識されることが必須です。
本記事では粉ミルクを批判するものでは全くありません。
しかし、授乳や粉ミルクに関する知識が消費者へ行き届いていないことも事実です。行き届いていない結果、授乳のインフラが整わないことに影響していると考えることもできます。
保護者が正しい知識の元、授乳と粉ミルクの活用をできる社会づくりをWHOコードはあと押ししてくれています。世界的に授乳の重要性に関する認識はまだまだ低いことから、この国際基準の認知が上がること、そして歴史的背景が知られることは大切だなぁと思います。
ナッツ。
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